越前シャツ
2019.8.6
石徹白に伝わる服の一つとして、
「越前シャツ」があります。
92歳のRさんによると、
それは、越前(福井県大野)の方から
買ってきた、縦縞の反物(着尺幅の布)を使って
男の人が着るために作ったものだそうです。
残念ながら、実物は残っていなくて、
亡くなったSさんというおばあさんが
ミニュチュアの服を作って展示してあるのを見たのと、
昔の写真には、スタンドカラーの越前シャツと
思われるものを着ている男性を見たことがあるくらいです。
そのものがもう残っていないし、
誰も作り方がわからないんじゃないかなあ、と思っていたところ
Rさんが「わしは作っとった。覚えとる」と言って
教えてくださったのが1年前のこと。
そのあと、何度も試作を繰り返し、
ようやくようやく、現代風になって
完成した「越前シャツ」、そして
そこから展開した「越前ワンピース」が
この8月からリリースされました。
特徴は、着尺幅で作ってあるので
前身頃が、布の取り都合で片側だけ剝いであること、
そして、シャツとはいえ、和服の延長なので、
脇に三角形のマチがついていること。
和服なのに洋服に近づけるために
スタンドカラーになっていて(おしゃれ!)、
動きやすいように袖口は思い切ったタックがあり、
カフスがついている、
という、まさに和洋折衷のデザインです。
(今回は草木染めの色展開です)
今後は、白も定番として作っていきます。
作り方を知れば知るほど、
貴重な布を最大限に活用しようと
本当にいろんな工夫がされていて
昔の人の知恵の深さに驚きます。
(たつけやはかまも一緒)
(丈を長くしてワンピースに。)
さらに、きっと、外来品だったYシャツが
デザインルーツなのか、おしゃれ心が
ふんだんに散りばめられていて、
限られた布をどうやってうまく使って
かっこいい、かつ、動きやすい服を
作るかが考え尽くされているのが
本当にすごいことだと思うのです。
この越前シャツも、
石徹白洋品店のメインの服として
これから展開していきたいと思います。
(8月展示はレディスサイズのシャツと
ワンピースだけの展開ですが
今後、メンズも出していきます!)
掘り起こしていけばいくほど
先人の知恵に驚かされ、
現代の私たちは、
何を求めて、こんなにたくさんの服を
生み出しているのかが不思議になるくらい、
合理的で効率的、かつ動きやすいものが
すでに、生み出されてきた。
私はそれを学ばせてもらってベースとして、
その上で、今のライフスタイルに合ったものを
創り出していきたいと思うのです。
過去への郷愁ではなく、
未来を示す新しい服として。
貴重な知恵を惜しみなく教えてくださる
RさんやSさん、Tさんたちへ、
私ができる恩送りは、
その作り方を、知りたい方に、
できる限りお伝えしていくことに
あるのかなあと考えながら、
そして今後、はかまや越前シャツも
レシピ本を出していきたいと思っています。
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石徹白洋品店
〒501-5231 岐阜県郡上市白鳥町石徹白65-18
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© Itoshiro Yohinten.