石徹白民話絵本、第五弾を製作中です。
2019.9.11
(今年の絵本のテーマは、
平安時代に奥州平泉・藤原秀衡が奉納した
虚空蔵菩薩です)
さて、絵本作りを始めた経緯などは
上のサイトに掲載されていますが、
移住者の子供が増えてきた中、
あるいは、大家族から核家族化が進んでいる中、
石徹白の歴史がなかなか引き継がれていかないことが
あまりにも惜しいことと思い、絵本という形で
石徹白に残る民話を伝えていく活動として行ってきました。
今回、第5作目ということで、
製作途中ですが、
あとがきの文章を公開いたします。
ぜひお読みいただき、
クラウドファンディングにも
ご協力頂けたなら幸いです。
(長文にて失礼いたします。
絵本完成時には多少修正する可能性もございます)
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石徹白に初めて訪れたのは2007年のこと。
学生時代に文化人類学専攻だった私は、
すぐにこの石徹白の翁らの話を興味深く拝聴し、
「聞き書き」という手法を使ったヒアリングを始めました。
その中で衝撃だったことを今でもよく覚えています。
それは、歴史上著名な人物名が
石徹白の歴史の中に重なって現れることでした。
「わしの家は、藤原秀衡の遣いで
石徹白にやってきた人らの末裔じゃ」
という話を発端に、源義経だったり、
あるいは明治時代の民俗学者・柳田國男や
宮本常一など、これまで私が教科書などの
書物の中でしか触れてこなかった人物が
次々と話に登場するのです。
石徹白の翁らは、こうした自身のルーツを
認識しているために、それによって、いい意味で誇り高く、
地域への愛着も深いように、私には感じました。
確固たる歴史に裏付けられた上に
自分が居ると知っているから、
個人個人の存在感の「濃さ」というか、
土着の匂いというのが、湧き出していて、
その集合体によって、「石徹白」という
独特な集落が形成されている・・・とさえ感じています。
(ものすごく具体的に歴史を知らなくとも、
そういう人たちが一部でもいる中で、
人々が生活を営んでいるということも
重要なのかもしれないです。)
石徹白は、昭和33年ごろまでは1200人ほどの人口を数え、
大変栄えましたが、その後、減少を続け、
今では250人にまで至りました。
日本各地、そのような集落は珍しくないとはいえ、
戦後の数十年で、それまで築いてきた
石徹白人のあらゆる知恵や技術、
あるいは、伝承されてきた家々のルーツが
継承されずに消えていってしまうのは、
あまりにも惜しく、それだけは避けなければと、
外者ながら思っています。
石徹白に住む人の姓で
現在もっとも多いのは「上村」さんです。
その上村さんのルーツをたどる
この虚空蔵菩薩の物語は、
石徹白を語るときに切っても切れない史実です。
格式高い、誇り高い家々だったから、
かつては、石徹白を出て行くときに
「上村(うえむら)」を名乗ることは許されず、
「上村(かみむら)」や「植村(うえむら)」に改名した、
と話す語り部もいらっしゃいます。
確かに、郡上の至る所に、そういった苗字の方がいて、
石徹白がルーツという話を聞くこともあります。
石徹白は縄文時代からの集落らしく、それ以来、
脈々と続いてきた地域の核になるようなことがあるはずで、
それらを読み解き、全く同じ形ではないにしても、
なんとかしてつないでいけるよう、
これからの未来を創る子供たちへ、
こうした絵本を贈っていきたいと思います。
さて、これまで4作(「ねいごのふたまたほおば」(2015)
「泰澄大師、白山への道」(2016)、「和田山の小池と龍神」(2017)、
「浄安くわは」(2018))の民話絵本を作ってきました。
これらは、15年近く前に、石徹白小学校の郷土教育の一環で
地域内で採取した民話をもとに、絵本を作らせていただきました。
今回の「虚空蔵菩薩と上村十二人」は、
初めて、聞き書きをもとに制作した絵本となりました。
上に記した通り、石徹白にとって、
大師堂は、そして虚空蔵菩薩は歴史的にも非常に大切なものですが、
大師講に入っていない限り、近年は訪れる機会があまりなく、
特に子供達にはなかなかその由縁が伝わっていないと感じていました。
そんな中、この大師堂を建造することに尽力された
上村太郎兵衛さんのひ孫に当たる、
上村修一さんにお話を伺い、
それをもとに民話絵本の制作を試みました。
虚空蔵菩薩については、知れば知るほど奥深く、
探求してもしきれないほどの歴史文化の
積み重ねがあることを実感しました。
そんな中、絵本を創作しても良いものか、
迷うことも多々ありました。
しかし、可能な範囲で、子供達に親しみ深い絵本という形で、
この虚空蔵菩薩の歴史を伝えていくことは、
今後、石徹白の未来にとって必要なことと信じ、
僭越ながらも絵本制作に踏み込みました。
ありとあらゆるお話を惜しみなく聞かせてくださった
上村修一さん、神社のお立場から
様々な資料をお貸しくださった
石徹白隼人さんに心から感謝申し上げます。
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ぜひ完成に向けて、民話絵本製作の継続のため、
ご協力頂けたら幸いです。
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