手しごとの喜びが愛着に
2018.3.3
雪が落ち着き、
ずいぶん晴れ間が増えました。
だんだん沈んでミルフィーユのようになり
残雪期に突入という感じがしています。
長い冬をかけて、作られたものたちが
手元に届く今日この頃、
それらを見ては、ニヤニヤする日々です。
たつけやはかまをお仕立てすると、
四角い端切れが出てきます。
それらを集めておいて、
細かい端切れも剥いで作ってくださった
コースターたち。
藍染、柿渋染めの大切な布なのです、と
お仕立てしてくださるHさんに
かねてからお話していましたが、
こんなに大事に扱ってくださるとは!
「いいでしょ〜」とニコニコしながら
完成品を見せてもらった時には、
真剣に、泣きそうになりました。
それくらい嬉しかったのです。
職人さんの大変な手仕事の末に
生み出された生地の、本当にちょっとした
端切れが、こんな風にして
最後まで生かされるなんて、
和服の大きな魅力です。
加えて、先日、
「毎日のように履いて、
こんなにボロボロになっちゃったの」と言う
お客様のたつけをお直ししました。
いつも縫製してくださるRさんに
お直ししていただいたのですが、
膝当てを元の生地で。
元はこんなに濃い色だったということが
わかります。
お直しの作業って、
思いの外大変なので
「手間もかかっちゃいますよね。。。」と
申し訳なくお伝えしたら、
「でもね、こんなになるまで履いてもらえるなんて
嬉しいじゃない」とにこやかに
お直しをしてくださったのです。
私も全く同じ気持ちでした。
だからこれからもたくさん履いてもらえるように、と
この膝当て、昔の人が昔のたつけの膝当てをしたのを
真似して、大きめの布をデザイン的に貼り付けて
お直しすることにしました。
そして、このストール。
これも先日届いたものなのですが、
この四角の部分は
コットンは、郡上でYさんが栽培したものを
彼女が手紡ぎして、
それを、Sさんが、染めた糸とともに
織った作品です。
このぽこぽこした糸と、
静さんの優しい染め色が
なんともうまく調和して、融合して
可愛らしくて愛おしくて。
Yさんの畑と楽しそうに糸紡ぎしている姿が、
Sさんの機嫌良く機織りしている姿が
目に浮かんできます。
私は、やはり、こういうものが
作りたかったんだなあ、と再確認させられる
ものたちが、集まりつつあります。
顔の見える範囲でのものづくりが
どうしていいことなのか。
それは、それぞれが、違和感を抱くことなく
かつ、楽しく、納得した形でものづくりに
関わることができているか、
確認した上で進んでいけることが、
とても大切なことなんだなあと感じています。
それは、何を作るのか、というのもあるし、
どれくらいの時間やエネルギー、思いを
注ぐことができるのか、ということも、
もちろん、それによってどういう暮らしを目指すのか
ということも大きいのだと思います。
アパレル産業は今やブラックボックス。
誰がどのような気持ちでもの作りをしているのか
全くわからなくて、それを私たちは身につけます。
喜びや楽しみの中で作られたものか、
悲しみや怒り苦しみの中で作られたものか、
こうした感情は、ものの形には表現されてこないけれど、
その「もの」の持つ波動に少なからず影響を
与えているのだと思います。
ものには罪はなくて、
この世に生み出された瞬間に、
どういうプロセスで創造されたとしても
大切にされるべきものとは思います。
けれど、どういうものを選ぶのかは、
選ぶ人が決めることができること。
なるべく、誰かを、何かを傷つけることなく、
誰かの喜びや楽しみにつながるものを
身の回りに置く、という選択肢があるのなら、
私はそれを選びたい。
それを選んでもらえる服屋になりたいと思うのです。
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石徹白洋品店
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© Itoshiro Yohinten.